揚げ物をしたあとの片付け。
あるいは、炒め物をして油がはねたコンロ周り。
キッチンに立つ人なら、一度はあの不毛な作業を経験しているのではないでしょうか。
洗剤をつけたスポンジで拭いているのに、なぜか汚れが消えない。
むしろ、右へ左へ移動しているだけのような感覚。
ふきんで拭けば、そのふきんが即・戦線離脱。
洗濯物がひとつ増えただけ、という結果に終わることも少なくありません。
「きれいにするために掃除してるはずなのに、汚れを広げている気がする」
あの小さな違和感が、料理後の達成感をじわっと削っていく。
キッチンのべたつきは、気分までくっついてくるから厄介です。
なぜ、油はあんなにしつこいのか
油汚れが厄介なのは、彼らがとにかく「仲良し」だからです。
油は油同士で強く結びつき、水とはあまり仲良くしようとしません。
そのため、いきなり水や濡れた布で挑んでも、表面をすべって逃げていくだけ。
芯まで届かず、結果として「落ちない」という印象だけが残ります。
液体洗剤も、もちろん効果はあります。
ただ、サラサラしている分、縦の壁や広い面ではすぐ流れてしまう。
汚れに浸透する前に、先にいなくなってしまうのです。
(洗剤の泡を、油が鼻で笑っているような、あの感じ)
だから何度も洗剤を足して、こすって、ため息をつく。
これが、べたつき掃除が疲れる理由なのかもしれません。
油汚れ掃除に使える、棚の奥の「白い粉」
そんなとき、思い出してほしいものがあります。
それは、キッチンの棚の奥で出番を待っている小麦粉。
掃除といえば「洗う」「拭く」が定番ですが、
油汚れには、まったく別の発想が効きます。
**「吸わせる」**という方法です。
油汚れを落とすコツは「吸わせる」こと
やり方は、拍子抜けするほど簡単です。
- べたついた油汚れの上に、小麦粉を直接ふりかける
- 指先や使い古しのカードなどで、油と粉をなじませる
- 粉が油を吸って、そぼろ状に固まったら集めて捨てる
あとは軽く水拭きするか、いつも通り洗剤で仕上げるだけ。
これだけで、あの終わりのない「べたつき追いかけっこ」が、
あっけないほど静かに終わります。
小麦粉は粒子が細かく、油を抱え込む力が強い。
水で薄める前に粉に吸わせてしまえば、
油はもう自由に動けなくなるのです。
油汚れを流したくない理由と、そのメリット
以前この方法を話したとき、
「排水口が汚れないのが一番いい」と言われたことがあります。
たしかに、新聞紙で拭き取るよりも、
粉に吸わせて塊にして捨てるほうが後腐れがない。
みんな、
「油をそのまま流すのは、なんとなく気が引ける」
そんな小さな罪悪感を抱えながら掃除していたのかもしれません。
「あ、これ、自分だけじゃなかったんだ」
そう気づくと、少しだけ気持ちが軽くなります。
ゴシゴシしない油汚れ掃除という考え方
この方法のいいところは、力がいらないことです。
ゴシゴシこする必要はありません。
小麦粉が油を吸って、ポロポロとまとまっていく。
その様子を見ていると、砂遊びのような妙な落ち着きがあります。
いきなり大技で殴るのではなく、
「マホトーン」で相手の動きを止めてから片づける感じ。
勢いを奪ってしまえば、後は楽。
家事も戦闘も、だいたい同じです。
賞味期限が切れた小麦粉があれば、なおさら活躍の場。
「食べるには微妙だけど、捨てるのは忍びない」
そんな粉が、最後にキッチンをきれいにしてくれます。
家事の負担を減らす、油汚れとの付き合い方
家事は、完璧を目指すと続きません。
でも、こうした理屈をひとつ知っているだけで、
心の余裕が少し増える気がします。
「今日は揚げ物だけど、まあ、小麦粉があるし」
そう思えるだけで、料理のハードルが下がる。
大掃除のように構えず、
気づいたときにポロポロ丸めて捨てる。
洗剤を増やすより、
手元にあるものの「別の顔」を知っておくこと。
それが、家事のMPを無駄にしないコツなのかもしれません。
さて、今日の夕飯は何にしましょう。
多少キッチンが汚れても、もう対処法は知っています。
まずは温かいお茶でも飲んで、一息。
掃除は、それからで十分です。
もし、棚の奥に使いきれない白い粉が眠っていたら。
次に油が跳ねたとき、そっと振りかけてみてください。