畳の部屋を掃除機でかけ終えたあと。
見た目はきれい。でも、なぜか胸を張って「掃除したぞ」と言い切れない。
そんな微妙な後味を感じたことはないでしょうか。
隅に残る、正体不明のざらっと感。
畳の目の奥に「まだいるよ」と居座っている気配。
掃除機は仕事をしたはずなのに、畳のほうがどこか納得していない顔をしている――そんな感じです。
吸引力は最強。
なのに、仕上がりは未消化。
どうやら畳相手に、力技だけでは通用しない場面があるようです。
とはいえ、洗剤を持ち出すのも気が引ける。
畳にとっては、いきなりの薬品攻撃。
こちらとしても「そこまで本気で戦うつもりはないんだけど…」という気分です。
そんな、掃除の迷子状態に、昔の人は静かに答えを用意していました。
使うのは――
実は、理にかなっていたらしい
いつもなら「お疲れさまでした」と、そのままゴミ箱行き。
ですが今日は、第二の人生があります。
それがお茶を淹れたあとの茶殻なんです。
まず注目したいのは、ちょっと湿っているところ。
乾いた埃は、掃こうとすると逃げます。
まるで「今じゃない」と言わんばかりに、空中へフワッ。
そこへ茶殻。
水分で埃を捕まえ、「ほら、もう飛べないよ」と重さを与えます。
静かながら、かなり仕事ができるタイプです。
さらに、お茶に含まれるサポニン。
天然の界面活性剤のような働きで、汚れをゆるめてくれます。
カテキンの消臭効果も加わって、掃除後の空気がほんのり爽やか。
しかも、道具は追加ゼロ。
茶殻本人も「え、まだ働くの?」と言いながら、案外やる気です。
水分は「やる気出しすぎない」くらいで
茶殻掃除で一番大事なのは、水分量です。
ここで張り切りすぎると、畳が困ります。
淹れたてでびしょびしょの茶殻は、
畳にとっては「ちょっと話が違う」状態。
やり方はシンプル。
・茶殻をざるにあげて、軽く絞る
・新聞紙やキッチンペーパーに広げる
・少し放置して、表面の水分を飛ばす
触ってみて、
「湿ってるけど、手は濡れない」
このくらいが、畳と茶殻の平和な関係を保つポイントです。
畳の目に沿って、静かに作業する
準備ができたら、茶殻を畳にパラパラ。
豪快に撒く必要はありません。
畳は、そんなに量を求めていません。
ほうきで、畳の目に沿って掃いていきます。
力は控えめ。
ここは筋トレ会場ではありません。
すると、茶殻が転がりながら、
掃除機が見逃してきた細かな埃をしっかり回収。
小さな塊になって、ちゃんと仕事の成果を見せてくれます。
音も静か。
動きもゆっくり。
気づくと、自分の呼吸まで落ち着いています。
色が変わると、ちょっと複雑な気持ちになる
掃き終わった茶殻を見ると、
最初のきれいな緑色が、薄く灰色に。
「……こんなに?」
さっきまで自分が座っていた場所から出てきた埃だと思うと、
少し複雑ですが、見なかったことにはできません。
集めた茶殻を回収し、
畳の目に入り込んだものがあれば、そこだけ軽く仕上げます。
終わった畳に触れると、
さらっとして、どこかご機嫌。
畳が「今日はここまででいいよ」と言ってくれている気がします。
毎日やらなくていい、という安心感
この掃除、
毎日のルーティンにする必要はありません。
・お茶をゆっくり飲んだ日
・天気がよくて、なんとなく気分がいい日
・畳の部屋が、ちょっと不機嫌そうな日
そのくらいで十分です。
専用洗剤も、最新家電もなし。
あるものを、ついでに使う。
この「ついで感」が、続けやすさの正体かもしれません。
畳と、少しだけ仲直りする時間
畳は、思っている以上に繊細です。
でも、ちゃんと手をかけると、正直に応えてくれます。
茶殻を撒いて、ほうきを動かして、
い草とお茶が混ざった、なんとも言えない香りを吸い込む。
それは掃除というより、
畳と「まあまあ、今日はこれでいきましょう」と話す時間。
次に急須の中で、役目を終えた茶殻を見つけたら。
捨てる前に、畳を一度見てみてください。
もしかしたら、
「あ、ちょうど来てほしかった」と思っているかもしれません。